娘が出て行った。
妻、「引き止めなかったの?」
私、「何も言わず出て行ったのだから、引き止めようがないだろ」
娘がいなくなると、夫婦の会話は無くなり、やがて、妻も出て行った。
一軒家は男一人で住むには広すぎる、引っ越すために家の片付けをしたのだが、粗大ゴミと大型ゴミが残ってしまった。
私、「粗大ゴミって、どうすれば良いの?」
同年代の同僚、「俺が知るわけないだろ、奥さんに聞けよ」
私、「大型ゴミって、どうすれば良いの?」
同年代の友達、「家のことなんて知らねえ、奥さんに聞けよ」
長年住んでいると、粗大ゴミや大型ゴミは沢山溜まる、専門の業者さんに頼むと、「夜中でも伺いますよ」と言ってくれた。
私だと動かすのが大変な大型ゴミを、同年代の業者さんは軽々と持ち、大量にあった粗大ゴミと大型ゴミは、あっという間に片付いた。
お茶をお出ししたかったのだが、どこに何があるのか家のことはサッパリ分からない。
「御家族とお住まいですか?」と聞かれたたら嫌だなと思ったのだが、業者さんは余計なことは聞いて来ず、作業が終わるとすぐに帰った。
粗大ゴミと大型ゴミが無くなると家は更に広く感じた、何より冷たさを感じる。
大型ゴミが置いてあったフローリングを触ると、少しだけ温もりがあった。
私がゴミと思っただけで、家族の温もりが残っていた、そう思うと泣けてきた。
あとは、妻と娘の荷物だけ。
会社から戻って来ると家に灯りが着いていた、どうしてだろう?家を出る時には消したのに。
カギを開けようと思ったのだが、開かない、どうしてだ?
チャイムを鳴らしても、応答無し、どうしてだ?
直後、スマホに妻と娘から「バイバイ」とメッセージが届き、最後の大型ゴミは私だった。